忘れられた戦場で

とあるブスの身の上話

女性差別の震源地 1/4

女性差別震源地はルッキズム*1だと私は思っている。

異論はあるだろうが、少なくともルッキズムを数多ある女性差別の一種だとか、性売買に付随するおまけの問題だとか、その程度にしかとらえていない人は完全に誤りだ。
ルッキズム女性差別の最深部か、それに近いところにある。

いち企業のセクハラが消えたところで世の中から女性差別がなくなることはないが、世の中からルッキズムがなくなれば他の女性差別も解消する(と私は思っている)。

だけど、ルッキズムは社会の深層に根差しているがゆえに、日常風景の一部と化してしまっている。
自宅の壁紙の模様を気に留める人がいないのと同じで、当たり前になりすぎて背景化してしまっているのだ。

そのため、いつまでたっても「パンドラの箱」は顧みられることなく、野ざらしで足元に転がったままだ。

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ここで、女性の劣等感/優越感がいかにして形成されるか、おさらいしとく。

ブスは生まれつき醜い顔を恥じているわけじゃない。
醜さを罵倒・嘲笑されることで、後天的に己の醜さを恥じ入るようになる。
同様に美人もまた後天的に美しさを知らされる。
劣等感も優越感も他者からのジャッジによって引き起こされる。

ブスがブスであることに劣等感を抱くなら、美人もまた美人であることに優越感を抱く。
ブスでも美人でもなければ、ブスでないことに優越感を抱き、美人でないことに劣等感を抱く。
女性たちはブスの扱われ方を見て「醜くあってはいけない」と恐怖し、美人の扱われ方を見て「美しくあらねば」という強迫観念を植え付けられる。

優越感の本質は劣等感だ。
年齢とともに「美」の優位性を失したとき、優越感は劣等感に成り代わる。
そうして、結局はすべての女性たちが劣等感を負わされるよう、この男社会でルッキズムがシステム化されている。

メディアがばら撒く「女は美しくなければいけない」というメッセージとリアルとの相互作用が女性たちをがんじがらめにしている。

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「ブス」は男社会のヒエラルキーの最下層に位置している。

男にとって、女を顔の美醜で序列化することは好都合だ。
女性のなかに階層を生み出すことで女同士の分断を図り支配しやすくなる。

男社会の最下層民は女社会でも最下層民となる。
女の世界は男の世界の下にあるからだ。
女の世界は男の世界の価値観を継承している。

女性は顔の美醜で序列化されている。
男だけでなく女どうしのあいだでも、その価値観が根づいている。

必然的に女性の最下層は「ブス」、最上位層は「美人」ということになるけど間違っていないでしょ?

エリート女性VS市井の女みたいな階級差より、顔の美醜による女性の序列化のほうがよっぽど深刻。
そもそも美人のほうが社会的地位が高い職に就きやすかったり、裕福になりやすかったりする。
上位層の男性の結婚相手には美人が多いからというだけでなく、女性自身の意欲とその継続性が容姿(差別)と密接に結びついているからだ。
もちろん、以前書いたように→【前編・ブスと醜形恐怖症】ルッキズムの被害に遭って醜形恐怖症を発症する美人もいるし、環境には顔以外の要素もからむから「美人のほうが~」と単純化はできない。
だけど、子ども時代から日常的に罵倒されてきたブスが、社会の上位層に食い込む確率はきわめて低いのは事実だ。
だから、エリート女性VS市井の女という構図にしても、女性の顔の美醜とまるっきり無関係というわけではない。
おそらく、エリート女性にブスはあまりいないのではないかと思う。

女性という属性が「顔の美醜」で序列化されているなら、それこそが女性差別震源地がルッキズムであることの証左だと私は思う。

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女性差別の元凶は男社会だ。

だから、私は十五年前の旧ブログ→【絶対悪】で、あえて女性の差別者には言及せずにきた。
そちらをご覧になればおわかりいただけると思うが、私の標的はつねに「男(社会)」だった。
現実を見れば、ブスを見下している女性などごまんといるが、男社会に起因する差別だからと女性たちの責を免除してきたのだ。

だけど、いまは少し違う考えを持つようになった。

男社会という「森」を俯瞰しながら、女性差別の全体像をフワーッと神の視点で論じているだけでは、いつまでたっても目の前にある現実を変えることはできないと思い至った。

ミクロ的視点に立って「女から女への差別」を白日の下に晒すことが、女性差別解消の第一歩になると今は思っている。
壁を登るための理論上の方法は知っていても、実際に壁をのぼるためには目の前に箱やら何やらを積み上げていかなければならないのと同じ。

女性差別は女性が気づかないとなくならないと私は思っているので、女性のなかにある差別意識を痛みを伴ってでも引きずり出すことは有効だと考える。

また、女の階層をつまびらかにすることで、最下層が「ブス」であることを示したい。
そうすることで、女性差別の発生源を探る手がかりにもなるんじゃないかと思う。

男社会の問題だからと取り沙汰されることがなかった、女どうしの分断を招きかねないからと忌避されてきた、そもそも同じ女でさえ蔑視しているから差別に気づいていない、そんな「女によるブス差別」についてのお話。

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今回と次回は全文「前置き」です^^;
五行ぐらいにまとめるつもりが、こんなことに。
よって、メイン記事は三回め以降となりまする。

ちなみに、キーワードは「差別の壁紙化/背景化/日常風景化」
今後もこれを推していきたい^^

(※容姿差別には純然たる容姿差別と、ステレオタイプジェンダーバイアスによる容姿差別があるけど、この記事では後者の「女性差別としての容姿差別」に焦点をあてています。)

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*1:当記事では顔の美醜に読み替えてください