忘れられた戦場で

とある醜女の身の上話

最古の記憶

人生で初めて「ブス」と言われたのは幼稚園のときだった。

 

私は同じクラスの二人組の男の子からイジメを受けていた。
積極的なイジメというよりは、たまたま彼らの傍を通ったりすると、1~2発殴られるといった具合だった。

だから、ニアミスしないよう努めて彼らを避けるようになった。
特にふたりとも背が高かったので恐怖の対象でしかなかった。

私が園の部屋後方のゴミ箱の上にすっぽりハマる形で座っていると、遠くにいた二人組がわざわざやってきてゴミ箱ごと蹴り倒されたこともあった。
ニアミスしなければ問題ないと思っていたので予想外だった。
どうやら私が「目立つことをしている」のが気に障ったらしかったが、この時点ではまだその理由がわからなかった。

 

ある日、例の二人組が廊下でほかのクラスのひとりの女の子と楽しそうにおしゃべりしているところに遭遇した。
彼らが私以外の女の子にどんな態度だったかは記憶にないけれど、笑顔で話す彼らを見て狐につままれたような気分になったことはおぼえているので、私ほどじゃないにしろ基本的に女の子とは仲良くしていなかったのだと思う。

とにかく、談笑する彼らの姿を見て幼かった私は我慢できずに直接聞いてみることにした。

 

私「なんで、その子はイジメないの?」
男「かわいいから」
私「なんで、私をイジメるの?」
「ブスだから」

 

これがすべての始まりだった。
有無をいわさぬ強烈な一言だった。
「ブスだから」がイジメの理由になることを、幼心に肌で感じ取った。
また、自分の顔が醜いことを知った瞬間でもあった。

彼らが仲良くしなかった女の子は、おそらく「ブス」だけだったのだと思う。
女の子と親しげに話しているのを見て、わざわざ本人らに直接理由をたずねたくなるほどには珍しい光景だったから、きっとそうなんだろう。

 

この最初の記憶はどういうわけか、20代後半になるまで記憶の片隅にも残っていなかった。
ひきこもりになってから数年が経ったころに、なんの前触れもなく突如として記憶の引き出しが開いた。
頭にその光景が浮かんだ瞬間に、それが夢や妄想なんかではなく「現実の記憶」だとすぐに確信した。

「なんの前触れもなく」と書いたけど、その時の私がそう感じただけで、今思うといくつかの兆候があった。
それについては、また別の機会に書こうと思う。