忘れられた戦場で

とあるブスの身の上話

点数をつけられた話

【高一OR高二】

友だちと一緒にマックのバイトの面接を受けた。

裏の従業員室へ通されると、長机の前に数人の若い男性バイトたちが座っていた。
長机は会議室のように対面に設置されていた。

私が挨拶をしながら入室すると、一瞬にして場の空気が凍りついたのがわかった。
何度も経験してきた、よくある瞬間だ。

店長から男性バイトたちに、面接に来た子たちだと紹介された。
また、彼らは大学生だとわかった。
私に向けられた彼らの視線はとても鋭くて痛かった。
友だちは気づいていない様子だった。

男性バイトの一人が隣りのバイトくんにボソッと耳打ちした。

「3点…って感じ(小声」

説明しよう。
昔、『がんばれ!ロボコン』という子ども向けの特撮ドラマがあった。
主人公のロボコンが一人前のロボットになるべく修行に励むお話で、ガンツ先生がロボコンの行いを採点するのだが、その採点システムが先生のお腹がパカッと開いて点数が書かれたカードが落ちてくるというものだった。
そして、先生が「ロボコン、●点」と点数を告げるのだ。

男性バイトの「3点…って感じ」は、そんなガンツ先生の採点システムを真似たものだった。
もちろん、100点満点中の3点だ。

初っ端からそんな陰口が聞こえてきて、すでにその店でバイトをする気は失せていた。
面接中はずっと上の空で、脳裏に「3点…って感じ」の場面がへばりついていた。
店長の仕事の説明は右の耳から左の耳だった。
私はぼんやりしながら「0点じゃないんだ?珍しいね…」などと思った。

どこへ行っても「顔」がつきまとった。
美人コンテストに参加するでもなく、ただバイトの面接を受けに来ただけなのに。
帰りたい死にたい帰りたい死にたい。
頭の中でそれをくり返していた。

私は「3点」の“発言者”と目を合わせないようにしていたが、人間の視界は170度あるので、否応なしに視界の端っこに映りこんでしまう。
その人は冷ややかな目で私を見ていた。

そんな顔なのになんで生きてるの?とでも云わんばかりの呆れ顔だった。

大学生の年齢になっても、“コレ”がまだ続くのかという絶望感。
もちろん、それ以上の年齢の男性から冷たくされてきたのだから、そんなことはわかりきっていた。
だけど、高校生から見た二十代前半は“近い将来”だった。
これまでの数年がこの先もまた確実に続くというリアルさがあって、その現実を改めて突きつけられたことで打ちひしがれた。

大人になってもこれか。
そうだ、終わらないんだ。
この顔でいるかぎり、この状況は死ぬまで続くんだ。

その場で断ったのか、あとから断りの電話を入れたのかは覚えていない。
とにかく、私がその店でバイトをすることはなかった。

一緒に面接を受けた友だちは、一日だけ出勤するとすぐに辞めた。
辞めた理由を尋ねると「だって、つまんないんだもんww」と彼女は笑いながら答えた。
バイトの先輩がどんな人だとか何をしゃべったとか、そういう話を一切しなかった。
私はなんとなく直感が働いて、あの男性バイトたちから私のことをなんか言われたんじゃないかと思った。

男「ねえねえ、面接のとき一緒にいたのって友だち?すっげえブスじゃない?ww」
男「(私と友だちが)並んで座ってるの見て、同じ女とは思えなかったよww可愛く生まれてよかったねw」

そんな感じのことを言われ、返答に窮し愛想笑いを浮かべるしかない友の姿を想像した。

私の特殊な顔による特殊な体験は、身近な人にも特殊な体験をもたらしてしまう。

私には普通の人の普通の暮らしが、とてもハードルの高いものだった。